休暇

休暇 [DVD]

休暇 [DVD]

良作。死刑制度を論ずるひとには必ず観てもらいたい映画。
西島さんの淡々とした生活は、死刑に対する恐怖を、現実感を鈍磨させることで必死に抑える日々の繰り返しである。(現実のすべての死刑囚のひとが、あのように生きているのではないとしても)
また、ひとの死の「あっけなさ」がリアルに演出されている。
最近、「アウトレイジ」と「ソナチネ」、ふたつのキタノ映画のなかで、たくさんのひとが死ぬ場面を観たが、各々の死の軽さに対し、今作の西島さんの死の重さが際立つ。
奇妙なのは、ひとの死はとても重たいものなのに、それにもまして世界が重たいからなのか、ひとりの人間の死は非常にあっけなく、ひとりの人間が死んだところで世界は何も変わることがないというパラドキシカルな印象を持った点である。
ただし、西島さんの死において、刑務官たちの内面に重くのしかかる「何か」は執行の前後において十分過ぎるほど強調されている(吐き気、食欲不振、重たい空気など)
世界にとってあっけない死と、生きる個人の内面において重たくのしかかる「死」。死にゆく本人を不在/宙吊りにし、死が生の世界に与える影響を見事に表している。